新年明けましておめでとうございます。
令和6年を迎えるにあたり、謹んでご挨拶申し上げます。
令和2年1月に国内での新型コロナウイルスへの初感染が確認されて以来、感染流行による健康被害や社会経済への悪影響に翻弄された数年間でありましたが、感染症法上の位置づけが第5類に移行した昨年5月以降は、インバウンドの回復等とともに徐々にかつての日常が戻ってまいりました。本年においても、新型コロナウイルスをはじめとした感染症対策を怠らず、コロナ禍以前の水準への回復に向け、社会経済活動を継続していくことが求められます。
年初には一時127円台を示した昨年の対ドル円相場は、日米の金利差等を背景に大きく値が動き11月には一時151円台にまで突入する等、1年間で大幅に円安が進行しました。輸出割合の高い製造業では企業業績の押し上げに貢献していますが、今般の円安局面では燃料・資源価格の上昇が同時進行していることから輸入原材料価格の上昇が中小企業の経営を圧迫しているとの指摘も見られ、わが国経済にとって厳しい局面が続いております。
一方、長期にわたる低成長やデフレの経験等から賃金や物価が上がりにくい慣行や考え方が定着していたなかにあって、昨年の中小企業における賃金上昇率は26年ぶりの高水準となる2.1%に達したほか、最低賃金の全国加重平均は初の1,000円台となる1,002円が示される等、長引く物価高と実質賃金の低下が値上げ・賃上げに対する社会受容性を高めている側面も見られます。企業経営に際しては難しい状況が続くこととなりますが、本年におきましても引き続き適正な価格転嫁と賃金引上げの流れを維持していくことが求められます。
昨年の国内新車販売では、各メーカーにおいて受注残の解消が進んだこと等から11月の時点で前年実績を上回る等、好調なセールスが続きました。また、新車の供給制約が緩和したことから中古車市場においても価格動向に落ち着きが見られ、昨年6月以降、東京都における中古車登録台数は前年同月比プラス水準で推移しております。車両販売は車検・点検入庫の源泉でありますことから、本年においても好調を維持し、コロナ禍以前の水準への回復を遂げることが期待されます。
昨年10月、4年ぶりに催されました「ジャパンモビリティショー」では、従来の「東京モーターショー」から名称を変更するとともに自動車業界以外からも広く出展社を募り、過去最大規模となる475社の出展によって多様な未来のモビリティと、それによってもたらされる誰もが移動の自由を享受できる社会のあり様が示されました。自動車メーカー各社よりスポーツモデルを含む多様なバッテリーEVのほか、今後数年以内でのタクシーサービスでの運用開始を想定している無人車両等が出展され、われわれ自動車整備業界が近年課題としている電動化技術や、自動運転技術を備えた車両の普及・浸透が間近まで迫っていることが自動車ユーザーの皆様にとってもイメージしやすい形で示されました。
また、子ども向け職業体験施設「キッザニア」とのコラボレーション企画や、日整連をはじめとした自動車関連16団体が参画する「自動車整備人材確保・育成推進協議会」が出展した体験型企画「チャレンジ!未来の自動車整備士!」では、多くの子ども達が自動車整備士を含む「クルマに関わる仕事」に触れる機会が提供されました。いずれの企画展示も好評を博したと伺っておりますが、こうした試みは将来の職業選択の場面において自動車整備士が選択肢に上る可能性を高める施策として、長期的な取り組みが求められます。東整振におきましても、こういった活動を事業活動に沿った形に落とし込み、継続していくことが求められているものと認識しております。
わが国では社会課題の解決に向け、デジタルの力を活用する流れが顕著となっておりますが、われわれ自動車整備事業者を取り巻く事業環境においてもデジタル化の波が到達しております。昨年1月に登録自動車より交付が開始された電子化された自動車検査証(電子車検証)は、軽自動車においても本年1月より交付が開始されます。継続検査OSSと連携し運用することで業務効率の改善が見込めることから、特定記録等事務代行制度の利用事業場は大幅に増加していくことが予想されます。また、本年はいよいよ電子車検証を備えた車両の車検入庫が本格化してまいります。東整振・都整商では継続検査OSSや保適証サービス、特定記録等事務代行制度の導入促進等を通じて会員組合員事業場の皆様の業務効率向上に資するデジタル化を支援してまいります。
加えて本年10月からは自動車の電子的な検査(OBD検査)の運用が開始されます。OBD検査ではABS等の運転支援装置のほか、レーンキープ機能等の自動運転機能や排出ガス関係装置を検査対象装置として、保安基準不適合となる故障コード「特定DTC」が検出された車両を検査不合格とすることとしております。令和3年以降に製作された国産新型車を皮切りに、令和7年からは令和4年以降製作の輸入新型車についても検査対象となります。指定工場では指定整備の実施にあたり対応不可欠な制度でありますが、持込検査受検前に「OBD確認」を実施することで検査場でのOBD検査が省略されるため、認証工場においても業務効率改善の観点から対応が望まれます。東整振・都整商におきましては、本年10月からの運用開始に備える会員組合員事業場の皆様をお支えするべく、引き続きOBD検査利用事業場登録の一括申請のほか、検査用スキャンツールの斡旋等に努めてまいります。
自動車整備業界を取り巻く事業環境は変化が続いておりますが、本年はこれに加えて業界最大のイベントであります「全日本自動車整備技能競技大会」の第24回大会が11月に催されます。東整振では、それに先立って7月に「第19回東京都自動車整備技能競技大会」を開催いたします。本大会の優勝者および準優勝者は第24回大会の東京代表選手として選出されます。前回第23回大会では、僅かに力及ばず上位入賞にいたらなかったものの、出場選手2名の活躍は記憶に新しいところです。第24回大会におきましても優秀な成績を収めることが出来るよう、関係者の皆様のご協力を賜りたくよろしくお願いいたします。
自動車整備業は、ヒトとモノの輸送の安全、いわば社会経済の根幹を支える業種であり、事業の継続性が強く求められます。自動車、あるいはモビリティの態様が変化していこうとも、適切な設備と確かな知識に基づいた認証工場による確実な点検整備の実施こそが輸送の安全の源泉です。自動車整備人材の確保や処遇改善、自動車新技術やデジタル化等、様々な課題への対応が求められているわが業界ではありますが、東整振・都整商では両団体が連携して諸事業に取り組み、会員組合員事業場の皆様の事業継続をお支えしてまいります。
結びにあたり、関係官庁、関係団体、また会員組合員各位の深いご理解とご協力をお願い申し上げますとともに、皆様方の事業のご繁栄を祈念いたしまして年頭のご挨拶とさせていただきます。