4.法人課税 (1)基本的な考え方 デフレから脱却し、日本経済を本格的な成長軌道に乗せていくため、国内企業の国際競争力強化と外資系企業の立地を促進し、雇用と国内投資を拡大することが喫緊の政策課題となっています。こうした観点から、先進国の中で米国と並んで最も高い水準にある我が国の国税と地方税を合わせた法人実効税率について、「新成長戦略」(平成 22 年 6 月 18日閣議決定)の方針の下、課税ベースの拡大等により財源確保を図りつつ、引下げを行います。厳しい環境に置かれている中小法人に適用される軽減税率も引き下げます。 また、雇用を増加させた企業を支援する雇用促進税制、成長分野である環境分野への投資を促進するための税制措置、国際的な企業立地競争の中で我が国の魅力を向上させる税制措置を講じます。 このような税制面での対応により、国内の雇用や投資が増加し、それが持続的な経済成長をもたらして、新たな雇用や投資を生むという好循環の実現を目指します。
(2)改革の取組み (1) 法人実効税率の引下げ 平成 23 年度税制改正では、国税と地方税を合わせた法人実効税率を5%引き下げます。このため、現在 30%である法人税率を 25.5%に引き下げます1。これにより、我が国企業の国際競争力の向上や我が国の立地環境の改善が図られるとともに、「日本国内投資促進プログラム」2で示されたように我が国企業が国内の投資拡大や雇用創出に積極的に取り組み、これらが相まってデフレからの早期脱却につながることが期待されます。 税率引下げに併せて、課税ベースの拡大を行います。具体的には、租税特別措置である特別償却や準備金等の廃止や一部縮減を行うほか、法人税法上の措置である減価償却制度の償却速度を主要国並みに見直すことや、大法人について欠損金の繰越控除を一部制限する等の措置を講じます。 なお、法人実効税率の引下げは、我が国企業の国際競争力の観点等から行うものであるため、全体として地方の税収に極力影響を与えないようにします。また、法人実効税率の引下げと課税ベースの拡大措置に伴う都道府県と市町村の増減収を調整するため、平成 24 年度から道府県たばこ税の一部を市町村たばこ税に移譲します。
(2) 中小法人に対する軽減税率の引下げ 我が国で地域経済の柱となり、雇用の大半を担っているのは中小企業です。厳しい経済状況の中、こうした中小企業を支えることは、重要な政策課題の一つです。法人実効税率の5%引下げは中小法人にも適用されますが、これに加え、平成 22 年度末に期限切れを迎える中小法人に対する 18%の軽減税率についても、一般の税率とのバランスや個人事業主の所得税負担水準とのバランス等を勘案して、15%まで引き下げることとします。これに伴い、中小企業関連の租税特別措置についても一部見直しを行います (3) 雇用促進税制 雇用の維持・増加を図り、それによって経済成長を推進することは、新成長戦略の一つの柱です。税制面でも、法人実効税率の引下げにより国内雇用の維持・増加を促すことに加え、現下の厳しい雇用情勢を踏まえ、出来る限りの支援措置を講じる必要があります。 そこで、雇用の受け皿となる成長企業を支援するために、雇用を一定以上増やした企業に対する税制上の優遇措置を創設するとともに、育児支援や障害者雇用促進のための税制上の優遇措置の創設・拡充を行います。 (4) 環境関連投資促進税制 地球温暖化問題への対応が重要課題となる中、先進的な技術力を有する我が国において、環境分野は大きな成長が見込まれる有望な分野の一つです。我が国の環境・エネルギー技術の開発を後押しすることにより経済成長につなげるとともに、地球温暖化問題に対応していくため、先進的な低炭素・省エネ設備への投資に対し、税制上の優遇措置を講じることとします。
(6) 租税特別措置(国税)の見直し 法人実効税率引下げに伴う課税ベースの拡大措置に加え、平成 22年度税制改正大綱にもあるように、税制を納税者の視点に立って公平で分かりやすい仕組みとするとの観点から、租税特別措置については引き続き徹底した見直しを進めます。平成 23 年度税制改正においては、政策税制措置について109項目の見直しを行い、その結果として、50項目を廃止又は縮減します。 |